「中国ゾンビ経済」の死に方とは?
そのとき何が起きるのか?
中国専門ジャーナリストが予測する!
中国専門ジャーナリスト福島香織が語る「チャイナリスク2017 衝撃の真実」
統計数字の水増しはいわずもがな、地方政府、国有企業、銀行の巨額債務を巧妙に隠してきた。国際決済銀行[中央銀行相互の決済をする組織。通貨価値と金融システムの安定を目的として中央銀行の政策と国際協力を支援する]のデータに基づく計算では、中国の公的債務は二〇一五年でGDP比四四%ということになっているが、中国社会科学院[中国の哲学及び社会科学研究の最高学術機構で、総合的な研究センター。中国政府のシンクタンク]による推計では二〇一〇年の段階ですでにGDP比二一五%となっている。その後の公共投資のペースなどを見ると、三〇〇%近くになっていても不思議ではない。
中国の経済崩壊とは、じつはすでに崩壊している経済の実態を受け入れることなのだ。中国では実質破綻状態にありながら、中央政府からの補助金で倒産せずにいる国有企業を「ゾンビ企業」と呼んでいるが、中国経済がすでに「ゾンビ経済」なのだ。すでに死んでいる経済をきちんと死なせる。そのとき、何が起きるのか。
最悪のシナリオは、国有企業と銀行の倒産ラッシュ、大量の失業者の出現、ようやく形成されてきたそこそこ豊かな中間層の消失、人民元の大暴落と消費者物価のハイパーインフレ……。当然日本を含む世界経済も無傷ではいられない。だが本当に恐ろしいのは、突如、人民元が紙くずとなり財産を失った人民の怒りが社会不安を引き起こし、それを政権が力ずくで抑え込もうとするときに発生する流血と混乱の可能性だ。
※新刊『赤い帝国・中国が滅びる日』重版出来記念。本文記事一部公開。
著者略歴
福島香織(ふくしま・かおり)
1967年、奈良県生まれ。大阪大学文学部卒業後、産経新聞社大阪本社に入社。1998年上海・復旦大学に1年間語学留学。2001年に香港支局長、2002年春より2008年秋まで中国総局特派員として北京に駐在。2009年11月末に退社後、フリー記者として取材、執筆を開始する。テーマは「中国という国の内幕の解剖」。社会、文化、政治、経済など多角的な取材を通じて〝近くて遠い国の大国〟との付き合い方を考える。日経ビジネスオンラインで中国新聞趣聞~チャイナ・ゴシップス、月刊「Hanada」誌上で「現代中国残酷物語」を連載している。TBSラジオ「荒川強啓 デイ・キャッチ!」水曜ニュースクリップにレギュラー出演中。著書に『潜入ルポ!中国の女』、『中国「反日デモ」の深層』、『現代中国悪女列伝』、『本当は日本が大好きな中国人』、『権力闘争がわかれば中国がわかる』など。最新刊『赤い帝国・中国が滅びる日』(KKベストセラーズ)が発売即重版、好評発売中。
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